ある本を開いてみたら、20数年前のメモが出てきた。
メモと言っても原稿用紙に書いたもので、図録に印刷される原稿と
して書いたものだった。
かって赤坂見附にあったサントリー美術館。その原稿はそこの企画展で
あった「サントリー美術館大賞展」に出展するためのものであった。
懐かしいので、少し長いのですが記してみます。
「日常、私達があまり目にすることのない、存在希有なものが、
都市のスミには存在している。
それらは東京湾岸埠頭にあったり、埋立地あったり、あるいはひっそりと
した鉄道高架下にあったりする。
一見、存在自体を自ら隠そうとしている様に見えるその物たちは、一応に
都市の中にありながら、都市のもつ現実的時間の流れとはかけはなれた
浄化、静止した空間に位置するように受けとめられる。
一体それらは何なのか。
簡単に抽象表現すれば、「何処でもない何処か、何でもない何か。」
と言うことになるのであろうが、これら物体の持つ霊的な超現実性が、
私を眼に見えない遠い遥かなものを予感させ、眼に見えない世界へと導き、
人間が本能的に持っている方向性へと示唆する。
私の制作意図は、これらの声に応え、作品をより物体的に、より物質的に、
あるいは霊的に導くことである。」
このコメントの作品は「Nostalgia」というh2mという大作。
ロシアの映画監督アンドレ・.タルコフスキー作品『ノスタルジア』に
インスパイアされての命名と記憶している。
その後、形態を変えて「ヨブからの答え」と言う作品名にもなりましたが、
いずれは更に形を変えて発表したいものです。